前回までの進捗状況
奥多摩のわさび田は、冬を越えて少しずつ春の顔になってきました。石垣を直し、水を整え、防獣の網を張り直しながら「植えられる畑」を増やしてきた中で、春にしか現れないご褒美があります。それが、わさびの花です。
わさびの花は、本当に短く、いまの2〜3週間しか採れない。だからこそ、毎年この時期はワサビ屋さんは花の摘み取り、畑の準備、苗の植え付けと大忙しになります。
本日の作業内容
昨日は、わさびの花を摘み取りに山へ入りました。採れた花は、500円玉くらいの束にして、鮨屋さんやイタリアン、街の飲み屋さんなどに1束500円ほどで卸しています。季節の香りを、料理人の手で“皿の上”にしてもらえるのが楽しみのひとつです。

写真:このくらいで卸値1,000円分くらいです。
この今回は、花を見たことがないという後輩と、いつもお世話になっている方へ「自分で収穫して届けたい」と言ってくれたかなっちが、わさび田に来てくれました。
将来的には、日頃バックアップを受けているPatagoniaさんとのコラボ企画として、「run to farm」や、「私たちの生活を支える多摩川の最初の一滴は」といったテーマで、上流の暮らしや、多摩川の水が“どこから生まれているのか”を見てもらえるような場を作りたいと思っています。今日はそのイメージも重ねながら、いくつかのわさび田を回りました。
観察できた変化
① 道沿いの小さなわさび田(復興中)

まず回ったのは、崩れた場所を一から直している、道沿いの小さなわさび田。小さいけれど、こういう場所がきれいになると「前は荒れてたのに」と通る人が気づいてくれる。登山者が足を止めて写真を撮る。地域の人が少し元気になる。そんな“見える復興”の象徴みたいなわさび田です。
② カリカゲ沢の奥田(歩いて入るわさび田)
そして今日のメインが、カリカゲ沢の奥田(奥の田んぼ)です。ここは歩いて、自分で3〜40分、普通の方なら1時間くらいかかる場所。今日は自分と後輩で20kgの貝殻+苗を歩荷し、かなっちは昼ご飯と水を担当。まず「畑まで辿り着く」こと自体が、ひとつの仕事になります。
奥田は、最初はここから始めた場所でもあります。ただ、ここに“苗を植えられる状態”まで持ってくるのに、実は4年かかりました。石を戻し、水を読み直し、崩れたところを直し、獣害対策をして、季節ごとの癖を見て……。何度も手を入れて、何度も失敗して、それでも少しずつ整えてきた場所です。

だから今日、やっと苗を植えられるところまで来たことが、素直に嬉しかった。たった一列、たった数十本の植え付けでも、「ここまで来た」という感覚がある。小さな苗を手に取った瞬間、これまでの道のりが頭の中を一気に流れて、思わず手が止まりました。
③ 奥田での分担作業と、鬼緑(メリクロン苗)の植え付け
奥田では作業分担しました。自分は苗の植え付け、かなっちはわさびの花の摘み取り、後輩には畑の周りの整備。2人はすぐに飽きて沢を上流まで登ったり、焚き火をしたり各々の行動に、、、ダメだこの人たち、、、。

植えた苗は、鬼緑(おにみどり)。メリクロンというクローン技術で増やした苗で、病気などに非常に強いと言われています。
値段は高く、1本約200円です。でも、この“1級のわさび田”に植えてみたかった。4年前から頑張ってきたので、苗を植えられたのは喜びひとしおです。
土に触れて、水に触れて、小さな苗をそっと置く。最後に指で周りを締めながら、願うばかり。「根付いてくれ、鹿に食われるな、増水で流されるな、チョウチョに卵産まれるなよ」
わさびは、植えた瞬間に結果が出る作物じゃない。結果は2年後です。
④ 師匠が親父さんと作ったわさび田(復興済みの“見せたい景色”)
奥田と次の広大なわさび田の間に、もう一つわさび田を回りました。師匠が親父さんと一緒に作ったわさび田で、現在は修復がひと段落、あとは苗を植え付けるだけの場所です。

作り手の時間がそのまま残っているような場所で、立っているだけで背筋が伸びる。案の定、ここでもエトー氏は「ロマンだなぁ…」とつぶやいていました。確かに、こういう“物語のある畑”を見せられると、やってることの意味が一段深くなる気がします。
⑤ 次の候補地:登山道沿いの広大なわさび田
その後下山し、次に向かったのは「Patagoniaとプロジェクトを展開するなら、ここかな」と考えている登山道沿いのわさび田へ登り返し。かなっちはいつになったらつくとー?とまたもや不満げです。
猟師の親方から将来的に譲ってもらうことになり、今から整備を進めていく場所です。とにかく広い。
キャンプ場や道路からも比較的近い(15分ほど)ので、これは自分だけのプロジェクトではなく、わさび組合の先輩や友人たちと一緒に畑づくりをしていきたいと思っています。
次の作業予定
- 奥田の植え付け区画:活着確認(葉の立ち上がり・流れの当たり方)
- 登山道沿いの広大なわさび田:水の入り口と出口の再確認、整備計画の作成
- わさびの花:残り期間で追加収穫し、届け先へ
気づいた課題や改善点
改めて思ったのは、わさびの花の時期は短いからこそ「人が集まる」価値があるということでした。
花を見たことがない後輩は喜び、かなっちは“自分の手で収穫して届ける”という体験ができた。これだけで、わさび田は畑以上の意味を持つ場所になります。

↑飽きてしまった人たちw↑
そして最後は、キャンプ場の前のわさび田に、余った苗を保存のために沢水に浸しに行って今日の作業を終えました。
今日は、大丹波のいろんなわさび田を回って紹介できたのでよかったです。「わさび田」って一言で言っても、道沿いの小さな復興から、歩いて入る奥田、師匠の歴史が残る畑、そして広大な将来の候補地まで、全部表情が違う。だから面白いし、だからロマンがある。
帰り道、後輩のエトー氏は相変わらず「ロマンだなぁ」を連呼。確かにロマンがないとこんなことやってないよな、と思いつつ。
スポンサーが付いている人間は服でも着てりゃいい。自分はスポンサーされていないので服は必要ない。俺はシャツを濡らすわけにはいかないすよ、などと言い、裸で20kg背負って歩いてましたwww

※本日の花は、友人に渡したり、ご近所に配ったり、寿司屋さん・料理屋さん・イタリアンにもお届けしました。どんな料理になって出てくるのか、今からとても楽しみです。


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