【畳石式廃耕田#21】2年越しの再生──大丹波の湧水ワサビ田、再び命吹く

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はじめに:遠いけど特別な場所

こんにちは。奥多摩の山奥で、かつてのワサビ田を一つひとつ再生しているまっさんです。将来このブログを読んでくださる方が、食卓に並ぶわさびの背景に、こんな物語があるのだと知ってもらえたら嬉しいです。

昨日、5月4日。久しぶりに大丹波の一番奥にある湧水ワサビ田を訪れました。

3つある中で最も遠い場所にあるこの田んぼは、山道を30分ほど登った先にあります。

それでもここを訪れるのは、わさびにとって理想的な条件がすべて揃っているからです。

冷たく澄んだ湧水が年中流れ、谷あいの空気は湿度と温度を程よく保ち、石垣で作られた段々畑には長い年月の知恵が刻まれています。

間違いなく「ここなら最高のわさびが育つ」と確信している場所です。

廃れたワサビ田との出会い

このワサビ田は、もともとは長い間放置されていたもので、私が2年前から少しずつ手を入れ、再生を進めてきました。

重機などは使えないため、すべて手作業。石を積み直し、崩れかけた段を整え、湧水の流れを見ながら植え付けの位置を探っていく作業は、地道で根気のいるものでした。

鹿の食害と絶望の一夜

一昨年はようやく芽が出てきて順調だったのですが、昨年、鹿による食害を受け、せっかく育っていたほとんどのわさびが食い荒らされてしまいました。

一面に広がっていた青々とした葉が、一夜にして無残な姿になっていたのを見たときのショックは、今でも忘れられません。

地道な対策と小さな希望

それでもあきらめず、何度も網を張り直し、鹿の侵入経路をふさぎ、少しずつまた苗を植え直してきました。

今回訪れてみて驚いたのは、そんな地道な作業が少しずつ実を結び、見事にわさびが再生していたことです。

葉の艶やかさ、水の冷たさ、根元から伸びる力強さに、「生きている」と感じさせられる瞬間でした。

苗を植え、段を整える

この日は、新たに土を運び、段の形を調整し、さらに苗を植え付けました。

山奥のこの場所では、わずかな勾配や水流の変化が成長に大きく影響します。

だからこそ、現地で時間をかけて様子を見なが

ら、少しずつ手を入れていくしかありません。人間がコントロールできるのはほんの一部で、あとは自然に委ねるしかない。

そんな感覚で、今日も黙々と作業を続けてきました。

食卓へつながる物語

このわさび田は、きっと数年後には立派なわさびを育ててくれるはずです。もし将来、私の育てたわさびが誰かの食卓に届いたとき、「こんな山奥で、こんな思いをして育てたものだったのか」と、このブログを通じて知ってもらえたらとても嬉しいです。そして、ひと口食べて「なるほど、これは美味しいはずだ」と感じていただけるような、そんな力のあるわさびを育てていきたいと思っています。

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この記事を書いた人

◆ MA-SAN
1978年製山岳仕様。登山歴25年。
中学生の頃から奥多摩に通う奥多摩好き。
本業はヤマデハタラクヒト(rescue & First Aid)

◆わさび栽培
中学生の頃見た「緑の階段」が忘れられず
興味を持っていたわさび栽培への道を模索。

2023年から奥多摩のわさび職人のもとで
本格的にわさび栽培に取り組み始める。

仕事の傍、多くの廃耕田を発見し、
2023年山歩きの途中で30年以上は
使われてないであろう理想のわさび田を発見。
山林を所有する町と契約し耕作を開始する。

2024年より奥多摩わさび組合に所属、
先輩方のもとで伝統的なわさび栽培を学ぶ。

◆きのこ栽培
わさび田の傍で奥多摩の清涼な空気と清流を利用した、
きのこ栽培にも取り組み中。

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